勝手に・シネマ・パラダイス/第9話『映画もいろいろ、映画館もいろいろの巻』

この『勝手に・シネマ・パラダイス』では、昭和から平成初期の映画館のお話をさせていただいております。と言っても、勝手な私の映画遍歴のため、「だから何やねん」という内容になってしまっていることをお許しください(苦笑)。これから登場する映画館はもう閉館してしまった映画館ばかりです。中には、今も当時の面影が残っている場所もございますので、状況が落ち着いたら映画館跡巡りというのも楽しいと思います。

さて、前回の第8話では、『梅田コマ・ゴールド』『梅田コマ・シルバー』『梅田グランド劇場』という3館が登場しました。3館とも、舞台の劇場や寄席の地下という共通点がありました。『梅田コマ・ゴールド』『梅田コマ・シルバー』は、現在では「HEP FIVE」になっております。その横並びに、現在のTOHOシネマズ梅田別館のところに『ニューOS劇場』という映画館がありました。この劇場は洋画中心の番組編成で、東宝東和作品をたくさん見た印象があります。場内は、前方部分と後方部分に分かれており、後方部分は緩やかな傾斜のある座席でした。『梅田コマ・ゴールド』『梅田コマ・シルバー』と『ニューOS劇場』が同じ通りに並んで在ったことから、この通りには「シネマストリート」という名前が付いていたと思います。うーん?何かそんな感じの名前でした(苦笑)。

この『ニューOS劇場』のすぐ近くに、現在のナビオ阪急の向かいにある「ナムコランド」がある場所に、『OS劇場』という映画館がありました。名前の通り、こちらの方が先に建てられました。この『OS劇場』は今も往年の関西の映画ファンには語り継がれる名館と言いましょうか、とにかく記憶に残る映画館でした。それは、この『OS劇場』は普通の映画館とは違い、シネラマ上映の映画館でした。シネラマとは、1本の映画を3台の映写機で上映します。シネラマは35mmの倍の70mmフィルムを使用します。そんな大型上映用のフィルムで3台の映写機を使って、1本の映画を上映する方式です。当然スクリーンも大きく、そして半円状にだいぶ湾曲したスクリーンでした。これにより、視界のすべてがスクリーンとなり、まるで映画に取り囲まれるような感覚になります。まさに、映像のサラウンドです。スクリーンが横に広かったので、シネスコ形式の映画を上映しても、他とは違う迫力がありました。ただ、とても歯がゆいのですが、言葉で説明するのはとても難しいのです。「凄い迫力」というありきたりな表現では足りない、ここでしか体験できない映画館体験でした。『OS劇場』で見た『トップガン』は、戦闘機を目で追うのではなく、首を動かして追いました!『OS劇場』は、目で見るというより、“首で見る”という表現の方がしっくりきました(笑)。

また、『OS劇場』はとても高級感があった劇場でもありました。当時では大変珍しい全席指定席でした。中央付近には特別席もあり、詳しい料金までは覚えておりませんが、とにかく高額で10代にはとても座れない座席だったと記憶しております。確か、そもそも『OS劇場』自体が、他の劇場よりも少し鑑賞料金が高かった記憶があります。間違っていたらごめんなさい(苦笑)。10代にとって、『OS劇場』はワンランク上の映画館という位置づけがされておりました。現在は「ナムコランド」になっておりますが、前の道路には少しだけ当時の上映作品が書かれたプレートが敷かれています。以前は、通りの端から端まで何十作品ものプレートが敷かれていましたが、今は数枚だけになり少し寂しい思いがします。それでも、ここに今も映画ファンに懐かしまれる伝説の映画館が在ったという証が残っておりますので、お近くに行かれた際はぜひ見つけてください。

『OS劇場』のシネラマ上映のお話を致しましたが、現在の大きなスクリーンと言えばIMAXです。この近年でIMAXを所有する劇場がどんどん増えてきました。IMAXの最大の特徴と言えば、美しい映像ととにかく大きなスクリーン。映画への没入感をこれほど味わえる上映形態はないかもしれません。そんなIMAXですが、日本に初めて登場したのは、1970年に開催された大阪万博でした。ですので、109シネマズ大阪エキスポシティは「日本のIMAXの聖地」でもあるわけです。大阪万博で初お目見えしたIMAXですが、その後は期間限定のような特別劇場での上映がありましたが、1990年代に大阪にIMAⅩシアターがついに登場します。その場所は映画館ではなく、天保山にある海遊館の隣にあった『サントリーミュージアム』という美術館の中に登場しました。映画を上映するというよりは、美術の映像作品を上映するのが主な目的だったと思います。サントリーミュージアムIMAXシアターは当時世界最大級の大きさを誇るシアターでした。幸いにも開館すぐにこのシアターで映像作品を見ることができました。タイトルは忘れましたが、宇宙飛行士のドキュメンタリーでした。そのスクリーンの大きさに圧倒され、まるで自分が宇宙の中に放り出されたような感覚に恐怖を覚えたものでした。当時はドキュメンタリー映画などの短編を定期的に上映されていましたが、極稀に一般映画も上映されていました。その中でも、『ハリー・ポッター』をこのサントリーミュージアムIMAXシアターで見ることができたのは大変思い出深いです。思い出深いとか言っておきながら、シリーズ何作目だったかは忘れました(笑)。このサントリーミュージアムIMAXシアターは世界最大級の大きさのスクリーンに対して、スクリーンと座席の距離がとても近いのです。また、座席もほぼ垂直と言えるくらいの急角度でした。ですので、前の座席は一切気にならないどころか、目の前にはスクリーンしか見えない状態です(しかも世界最大級の!)。視界のすべてがスクリーンという状態は、映画の世界に入るというか、まるで宙に浮いているような感覚になりました。そんな感覚に陥りながら見る『ハリー・ポッター』の迫力たるや凄まじいものがありました。劇中で行われる“クィディッチ”のシーンでは、自分の背後からハリーがヒューンッと飛んできてビックリした直後、今度は自分の足元からハリーがヒュワーンッと上がってくるのです!体をのけぞらせながら一緒になって“クィディッチ”に参加しているようで楽しくて仕方ありませんでした(笑)。

後にサントリーミュージアムIMAXシアターは閉館となるのですが、確か最後の上映作品となった『HUBBLE 3D -ハッブル宇宙望遠鏡-』は私の人生で最高の映像体験でした。“宇宙の天文台”と言われるハッブル宇宙望遠鏡が撮影した宇宙の映像をIMAX3Dという最高の環境で体験できるのです。上映時間は40分程度の短編でしたが、私は40分間だけ地球を離れて宇宙にいました(笑)。本当に宇宙にいるような体験でした。サントリーミュージアムIMAXシアターは、天保山というロケーションも含めて特別な場所でした。現在は、IMAX作品は増えていますので、またここでIMAX作品を見ることができたら最高だと思います。クリストファー・ノーラン監督のあの『ダークナイト』を70mmで1回だけ上映したこともあるのですよ(確か1回だけでした)。サントリーミュージアムIMAXシアターが現在はどういう状態かわかりませんが、もしまだ上映できる状態で保存されているのなら、ぜひとも復活してほしいと強く強く願っております。

少し長くなってしまいました(苦笑)。映画や映画館は常に進化していきます。今もこれからもその進化は続くと思います。そして、新しい刺激と興奮を私たちに見せてくれるはずです。当館も、“音響に拘る”というポリシーを更に進化と成長をしていきたいと思いますし、“何をしでかすかわからない”というインテリジェンスの低さをさらに低くしていく逆成長もしていきたいと思います(笑)。次回、第10話は『梅田周辺三大映画館の巻』です。

営業再開までもうしばらくお待ちください。また皆様と当館で再会できることを楽しみにしております。それではまた・・・。