2019年ー塚口に法螺貝が鳴り響く

多くの方々のお陰で、本日より営業再開致しました。また1からのスタートの気持ちで頑張って参ります。この『tabloids』も当初は営業再開までと思って始めたのですが、結局営業再開後も継続することになりました(笑)。年々書くことが増えていき、終わりが見えない感じですが、本日からはついに“去年”の2019年の出来事についてお話を致します。最後までお付き合いの程よろしくお願い致します。

※記事の中に映画のタイトルがたくさん登場致します。タイトルと製作年の後に付く文字が、NはNetflix、hはhulu、APはAmazonプライム、AVはAmazonビデオ、TはTSUTAYA TV、UはU-NEXTと、その作品がご覧いただけるそれぞれの動画配信サイトの頭文字を表記しております。ご自宅での映画ライフの参考にしていただければ幸いです。

2018年の12月最終週より、ポリゴン・ピクチャアによるアニメーション版ゴジラ第2作目『GODZILLA 星を喰う者』(2018年公開/N/AV/U)の上映に際して、再びゴジラ特集を致しました。アニメ版ゴジラの前作でも特集を組みましたが、2作目の繋がりや、ハリウッド版ゴジラを見据えての企画でしたが、今回は以前よりリクエストの多かった「平成VSシリーズ」から、初めて植物をベースにした怪獣が現れるゴジラシリーズの第17作目『ゴジラVSビオランテ』(1989年公開/h/AP/U)、「平成ガメラシリーズ」で怪獣映画に新たな風を巻き起こした金子修介監督による『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年公開/h/AP/U)を35mmフィルムで上映致しました。これまでゴジラを何作か上映をしておりますが、「平成VSシリーズ」は往年のファンの方から若い方まで今までで一番幅広い層の方がたくさんお越しいただきました。

また、2019年は元号が「平成」が変わるということで、2018年から2019年と年を越えて、平成を代表する大ヒット映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』(1998年公開/N/AP)を35mmフィルムで上映致しました。「平成が終わる」ということで、平成最後の年末年始に「平成」を象徴する映画を上映しようと思った時に、この映画が真っ先に頭に浮かびました。ドラマからの映画化は定番化していましたが、この作品ほど大成功を収めたのは記憶にありませんでしたし、映画を超えて様々な展開を見せてコアなファンを生んだことは、「踊る」以降のエンタメ界に多大な影響を与えたと思います。個人的に「踊る世代」なので、上映期間中はあのテーマ曲を聞くたびに走りたくなりました (笑)。

年が2019年になり、毎年恒例の「男はつらいよ」シリーズの正月上映ですが、この年は少し嗜好を変えて、「寅さん」ではない喜劇俳優・渥美清の作品を取り上げようと、渥美清とは何度もタッグを組んだ森崎東監督による『喜劇 男は愛嬌』(1970年公開)を上映致しました。「寅さん」ではありませんでしたが、年初にスクリーンから渥美清の切符の良い声が聞こえてくると嬉しくなりました。

2018年12月に『クワイエット・プレイス』というサスペンスホラー映画で、「静寂上映」という新たな試みを致しました。いつもは騒がしい塚口が、真逆の静けさを求める上映会は大変好評をいただきました。その時の様子を見て、これはあの作品で再びやってみたらきっと上手くいくのではないかと思っておりました。その作品が、京都アニメーションの大傑作『リズと青い鳥』(2018年公開/U)です。

『リズと青い鳥』という作品はとても繊細な作品です。台詞の息遣い、廊下の歩く足音、演奏の些細な音の違いなど、まるで芸術的な飴細工のような美しさと脆さが絶妙なバランスで存在する作品です。細やかな音で、主人公への感情移入の深さが変わると思っていました。そこで、この作品をより完璧な鑑賞環境でご覧いただきたいと思い、『リズと青い鳥』では全上映回を『静寂上映』することにしました。

●場内へのお飲み物のお持込は、水またはお茶など炭酸飲料以外でお願い致します。

●上映中の食事(お菓子含む)はご遠慮ください。

●スマートフォン、携帯電話、タブレットの電源はOFFでお願い致します。

●場内にビニール袋などの音の出る物のお持込はご遠慮ください。

●『リズと青い鳥』に限り、売店でポップコーン、ビールの販売はございません。

●上映開始時間までにはお席にお戻りください。

●終映後、場内が明るくなるまでお席を立たないでください。

以上が『静寂上映』のお願いになります。この『静寂上映』はお客様のご理解とご協力が絶対不可欠です。上映が始まると、私たちができることは限られております。上映前にできることは致しました。それは、最高の音響調整です。一音たりとも漏らさず、最高のバランスの調整をしてくれました。『リズと青い鳥』を特別音響上映で『静寂上映』で楽しんでいただける環境をご用意することはできましたので、後は皆様のご協力にお願いするだけでした。

結果は、連日素晴らしい『静寂上映』となりました!その日お越しになる方々が誰一人として認識のズレがなく、全員が心のコンセンサスが取れた実に素晴らしい一体感がありました。上映中は本当に物音ひとつなく、シーンとした空気が流れる音が聞こえるくらいの静寂の中で見る『リズと青い鳥』は忘れられない映画館体験になったと思います。場内が明るくなると、お客様が解き放たれたようなフゥ~と大きく息をつかれている方が多くおられたのが印象的でした(笑)。

年末年始に「平成」を意識して、ゴジラの『平成VSシリーズ』と平成最大のヒット作『踊る大捜査線』を上映致しましたが、いよいよ平成も終わりに近づいた3月には「平成でもっとも大人を困らせた幼稚園児」であるクレヨンしんちゃんの傑作を上映致しました。20世紀へ時間を逆戻りさせようとする組織との戦いを描いた傑作を、時代が変わる直前に見ていただきたく『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』(2001年公開/AP)、そして『モーレツ』と同じ原恵一監督の名作『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2002年公開/AP)の2作品を35mmフィルム上映致しました。

2019年の塚口マサラ上映の1発目は、スーパースター、ラジニカーント主演の『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1998年公開/AP)でした。以前にもマサラ上映を致しましたが、今回の『ムトゥ』は4K&5.1chデジタルリマスター版でした。塚口では2K上映になりましたが、その分5.1chの良さを最大限に活かした塚口らしい最高の音響で上映を致しました。

ラジニ様の代表作でマサラ上映をしないわけもなく、もちろんマサラ上映を2月23日に開催致しました。『ムトゥ』のマサラ上映は2回目で、デジタルリマスター版とは言え20年前の作品なので、お客様は来て下さるか少し心配をしておりましたが、何とシアター3は満席になりました!そして、今回も皆様の衣装が最高に素敵でした。サリー姿の女性も多く、男性の方もクルタと呼ばれる衣装を着て来られる方が多かったです。インド映画のマサラ上映をするたびにどんどん劇場内が異国情緒に溢れてきて、「ここは本当に尼崎なんだろうか?」と思うようになりました(笑)。2013年6月に『恋する輪廻』というインド映画で初めてマサラ上映を開催してから6年近い日が経ち、「塚口印度化計画」もだいぶいい感じに進んでいっていると思いました(笑)。

6年も経つと、マサラ上映のマナーや楽しみ方が確立されてきたように思います。これは、劇場がどうこうしたわけではなく、すべてはお客様が作り上げてくれました。これは本当に有難く感謝の気持ちでいっぱいです。塚口マサラが素晴らしい空間になるのも、この6年間にたくさんの方々が“楽しい場所”として塚口マサラを育ててくれたおかげだと思っております。その成長を間近で見てきたので、今回の『ムトゥ』でも最高の盛り上がりを見せる場内を眺めながら、本当に塚口マサラをやり続けて良かったと思いました。

お話は一旦3月に進みます。塚口はtwitterを良く活用しております。劇場公式でありながら、ふざけてばかりのアカウントですが(笑)、この時twitterで得た情報から上映が決まった作品がありました。それは、80年代の映画を語る上で欠かせない『ロボコップ』(1988年公開/U)です。

実は、フォロワーの方から教えていただけるまで『ロボコップ』が上映できることを知りませんでした。個人的にも『ロボコップ』は公開当時、梅田の北野劇場(現TOHOシネマズ梅田)で見ていたので、上映権利があることに興奮しました。早速、フォロワーさんから教えていただいたアカウントの方にDMを送って上映が決まりました。この様な形で映画の上映が決まるのも実に今の時代らしいと思います。

そして、3月は何かと話題になってしまった応援上映を開催致しました。その映画は、アニメ化やミュージカル舞台化もされ、ついに実写映画化されて『映画刀剣乱舞』(2019年公開/AP)です。

絶大な人気を誇る「刀剣乱舞」の映画化ということで大変話題となり、塚口へも上映リクエストをたくさんいただきました。塚口でも上映が決定したことを告知すると、大変大きな反響をいただきました。そして、ロードショー公開時にtwitterでもその盛り上がりが話題になった「応援上映」の開催を希望される声も多くいただきました。その多くが、「塚口なら法螺貝にOKを出すはず」という内容でした(笑)。他劇場ではNGだったけど、塚口ならというご期待をいただきました(笑)。とりあえず3月2日に応援上映をしますが法螺貝についてはNGとしました。正直なところ、最初に法螺貝のことをtwitterで見た時から「絶対に法螺貝OKにしたい!」と決めていたのですが、よくよく考えると本当の法螺貝の音を聞いたことがない事に気付きました(笑)。スタッフに聞いても誰も聞いたことがないと。聞いたことがあるのは時代劇でのポォォオ~ポォォオ~というのしか知りません。ドラマなので正確なことはわかりませんが、もし100人が法螺貝を一斉に吹いたらさすがに近隣から苦情が来ると思ってとりあえず一旦NGとしました。さらに正直なことを言いますと、すぐにネットで法螺貝が売ってないか探しました(笑)。でも、それなりにちゃんとした法螺貝は結構いいお値段をするのです(苦笑)。買おうかどうか悩みました。さすがに法螺貝は経費で落ちません(笑)。「刀剣乱舞」応援上映以外でも法螺貝を吹く機会が自分の人生の中で何回あるか?と自腹の覚悟で考えた時、まずそんな機会はないとすぐに答えがでました(笑)。

でも、法螺貝を何とかしたいと思っていろいろ考えました。空き瓶の飲み口のところに息を吹きかけるとポ―ポ―と音が鳴るので、皆様にも空き瓶を持ってきてもらって法螺貝の代わりにしようと思いましたが、意外と音が小さくて仮に150人で吹いても音がしょぼいだろうと思い却下。では、もっと手軽にできないかと思って見つけたのがハンドフルートでした。めちゃくちゃ練習しましたが、不器用な私は結局取得できずに断念しました。

でも、このまま法螺貝NGは塚口らしくないと思い、みんなで話し合ったのですが、実家又は親戚、友達も家で法螺貝を飾っているの見たことある?と聞いたら、ほぼ全員が「見たことない」と答えて、一人だけ「甲冑はあっても法螺貝はない」とのことでした。じゃあ、どれだけの方が持って来られるかわかならいがとりあえずOKにしようとなりました。ただ、実際の法螺貝の音がわからないとは言え、上映中に吹くのはさすがにどうかと思うので、開場を告げる合図として劇場前で法螺貝を吹いてもらうことにしました。

この法螺貝提案はなかなかの反響をいただきました(笑)。ファンの方が盛り上がるのであれば何とか実現させたかったのですが、問題は、チケットはお陰様で満席完売となりましたが、本当に法螺貝を持って来られる方がいるのかどうかでした。そして、当日を迎えました。続々と審神者の方々が集まってきました。その様子を見ながら、スタッフと「さすがに法螺貝はいないみたいやね」と言っていました。するとチケット窓口から内線が鳴りました。

『法螺貝!来ました!!』

『ほんまに!!』

なんと本当に法螺貝を持って来られたのです!それも3名様も!どうしたらいいんだろうと現場はパニックです(笑)。でも、お客様は盛り上がっているので、もう吹いてもらおうと(笑)。そこで、法螺貝以外のお客様には一旦B1F待合室にお集まりいただいて、開場を告げる法螺貝の音が聞こえたら、その音にこたえる雄叫びを挙げて劇場に入っていただくことにしました。開場を法螺貝で告げるなんて前代未聞だと思います(笑)。入場されている間も吹き続けてもらいました。劇場前を通行される方々が「何事!?」と言いたげな驚いた顔をされていましたので、「ご安心ください。普通の映画館です。」と言って回りました(笑)。普通ではない自覚は多少ありますが、何よりもお客様が凄く楽しそうにされていたのでそれで十分なのです。念のために申し上げますが、一応前日に近隣には「明日のお昼ごろに法螺貝が聞こえるかもしれません」と事前に言っております。毎度のことなので温かいご理解いただいております(笑)。

後から聞いたのですが、最初の法螺貝を持って来られた方はチケットを取れなかったにもかかわらず応援上映を盛り上げるために名古屋からお越しになったそうです。そして、偶然チケットを1枚余らせた方と出会って応援上映に参加できることになったそうです。最高の奇跡が起こっていたのです。この法螺貝のエピソードは後に映画がテーマのコミックにも取り上げてもらいました。本当にこの様な面白い展開を作ってくださった方々には心より感謝です。

文字数が増えてきたので、本日はここまでとさせていただきます。一旦3月のお話をしたので、明日は2月の『ボヘミアン・ラプソディ』のお話をさせていただきます。

本日も、最後まで読んでいただきありがとうございます!

明日も、暇つぶしに読んでいただければ嬉しいです。

Keep your hands washed!

Keep gargling!

Keep wearing a mask!

Thank you to all who are fighting to prevent “COVID-19” infection!